終活は高齢者だけのものではなく、大切な人への思いやりのかたちです。~

「終活(しゅうかつ)」というと、“人生の終わりに向けた準備”という印象を持たれるかもしれませんが、実際にはこれからをよりよく生きるための“未来への準備”であり、同時に家族への思いやりを形にする行動でもあります。年齢を問わず、自分の意思や希望を整理し、必要な情報を家族と共有しておくことで、いざというときの備えとなり、安心した毎日を過ごすことにもつながります。

終活と相続は、それぞれ「生前」と「死後」に行われる別々の過程ですが、両者は密接に関係しています。たとえば、終活の中で財産の内容や所在を整理しておけば、相続発生時の手続きが格段にスムーズになります。また、遺言書をあらかじめ用意しておけば、遺産分割の方向性が明確になり、相続人同士の争いを防ぐ効果も期待できます。さらに、医療や介護、葬儀などに関する希望をエンディングノートに記しておけば、ご家族は迷うことなく判断ができ、精神的な負担も大きく軽減されます。

一方で、何の準備もないまま相続の場面を迎えると、ご遺族は多くの困難に直面することになります。

「どこに財産があるのかわからない」「口座が凍結されたが、通帳や印鑑が見つからない」「遺産の分け方に本人の意思が感じられず、家族内で意見が分かれる」──こうした事態は、手続きの煩雑化や長期化を招くだけでなく、家族関係に深いしこりを残すことにもなりかねません。

つまり、終活をしないという選択は、ご家族の“時間”と“心の平穏”を損なうリスクをはらんでいるのです。

終活とは、単なる“終わりの準備”ではありません。故人の思いを、遺された人にきちんと届けるための「未来への準備」です。元気な今だからこそ、自分自身と向き合い、大切な人と対話する。その一歩が、安心と信頼に満ちた相続につながっていきます。

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