~「結婚では当たり前だったことが、離婚後は“ルール”になります」~

結婚生活において、夫婦間で「今月の生活費をいくら払うか」「休日に子どもとどう遊ぶか」をわざわざ書面で契約する人はいません。しかし、離婚によって別々の人生を歩み始めると、この「暗黙の了解」や「信頼」は通用しなくなります。結婚生活では不要だった「書面による約束」が、離婚後には自分と子どもを守る最も重要な手段となるのです。
【「言った・言わない」の口約束が招くリスク】
離婚時に決めたはずの養育費の不払いや、親子交流(面会交流)の拒絶。これらのトラブルの最大の原因は、「合意内容の曖昧さ」と「書面化されていないこと」にあります。「払える範囲で払う」「会いたいときに連絡する」といった口約束では、お互いの生活状況が変わった途端に守られなくなってしまいます。 だからこそ、金額、支払方法、期限、さらには「進学等で事情変更があったときの見直し方」など、誰が読んでも解釈がぶれない明確な「離婚協議書」として残すことが不可欠です。
【法改正による「法定養育費」はあくまで最低限】
「話し合いの負担が大きいと感じた」と取り決めをせずに離婚してしまった場合、どうなるでしょうか。2026年4月施行の改正民法では、離婚時に養育費の取り決めがなくても、子ども1人あたり月額2万円を最低限度の指針として、養育費の請求や裁判所での調整に活用されます。 しかし、この新設された制度は、あくまで養育費の取り決めをするまでの暫定的・補充的なものです。子どもの健やかな成長を支えるためには、各自の収入などを踏まえた適正な額の養育費を、しっかりと父母間で協議し、取り決めておくことが重要です。
【最大の注目点:ハードルが下がるが、公正証書が依然有効】
これまでの民法では、養育費が未払いになった際に相手の財産を差し押さえるためには、公正証書や調停調書などの「債務名義」が必要でした。 しかし、今回の法改正により、養育費債権に「先取特権(さきどりとっけん)」(給与や預貯金など、相手の財産について、他の債務よりも優先的に差し押さえの手続が可能になる)という優先権が付与されます。これにより、公正証書のような債務名義がなくても、父母間で作成した私的な文書(離婚協議書など)に基づいて、子ども1人あたり月額8万円を上限として、差押えの手続を直接申し立てることが可能になります。 「公正証書を作る時間や費用がない」という事情を抱えた方にとっても、自分たちで署名・押印した合意書をしっかり残す実務上の意義が、法改正によって大きく高まります。具体的な条文設計については専門家の関与が重要です。
【「法的に守られる約束」で子どもの未来を支える】
もちろん、財産分与や慰謝料などを含めた総合的な安心を得るためには、公証役場で「公正証書」を作成することが依然として最も確実で実効性が高い手段です。 離婚はゴールではなく、新しい生活のスタートです。親同士の感情的な対立を一旦横に置き、「信頼」を「法的に守られる約束」へと転換させること。それが、離婚後のお金や面会交流に関するトラブルを防ぎ、子どもの安心と未来を守るための最大の親の責任なのです。
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